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岩隈久志(いわくまひさし)選手インタビュー

IWAアカデミーに込めた思い

岩隈久志選手

── IWAアカデミーは岩隈投手が監修されているスポーツ施設ですが、ご本人自ら紹介していただけますか。
岩隈 − これまでずっと野球をやってきた僕にできることといえば、野球に関するノウハウを提供することです。そこには野球の技術もありますし、身体づくりや調子の悪いときの克服法も含まれています。

トレーニングやプラクティス、特にリカバリーに関するノウハウは、野球以外のスポーツにも応用できるものです。ケガに悩まされたことがある僕には、トレーニングからリカバリーまで、身体全体のアドバイスができる施設ができたらいいなという思いがかねてよりあって、その結果としてカタチになったのがIWAアカデミーです。

── 具体的にはどのようなノウハウを提供されているのですか。
岩隈 − メソッドはPRSといって、プラクティス(Practice)とリカバリー(Recovery)とストレングス(Strength)の3つをサイクルさせて構成しています。それらが相互的に関わり合って、身体をいい方向にもっていくわけです。

プラクティス、つまり実践は身体づくりに必要なプロセスですが、それだけではだめなんです。ストレングスで身体の強化もしていかなければなりません。そして、さらに大事なのがリカバリーです。リカバリー・フィールドという治療ルームを作ったのもそのためです。アスリートは、ただトレーニングしたり鍛えたり、練習するだけではだめだということを体験を通して理解してきたし、そのために必要なものをIWAアカデミーでは具現化しています。

PRSを通して重要なのは自分の身体を知っていくことです。特にリカバリーという治療を受けていくと、自分の身体がどうなっているのかが分かってきます。これら3つの流れの中で技術向上を図ってもらえたら、という思いでやらせてもらっています。

岩隈久志選手

ケガがあったから自分と向き合えた

岩隈久志選手

── 日本で活躍されていた頃、肘の手術を受けられました。その際に「自分の身体は自分で守る」という意識が芽生えたということですが、セルフ・コンディショニングの重要性についてお話いただけますか。
岩隈 − 初めて肘の手術をした際、自分の身体としっかり向き合ったように思います。何が原因でこうなったのか、ということも考えましたし、ケガをしたとはいえ、練習を休むわけにもいきません。ケガをしているなりにできること、やらなければならないことは何か、ということも考えました。

その中で、自分の身体が分かってきたといいますか、たとえば身体のどの部分の動きが悪くなっているのかということが分かるようになってきました。身体との対話意識がまだなかった頃は、闇雲に、まさにがむしゃらに身体を使ってそれがケガにつながっていたことにも気づきました。ケガをして自分と向き合えたというか、自分の身体の仕組みを考えたというか、ケガをしたからこそ自分の身体を知っていかなければいけないと思いました。

ケガを事前に防ぐ方法もあるはずだし、トレーニングにしてもいろいろな形があるんじゃないか、と考えるようになりました。野球は個人競技ではありませんが、身体が資本であることに変わりありません。自分の身体は自分で守らなければいけないことですし、鍛えるのも自分自身です。そしてその中でいかにパフォーマンスを出していくかが一番重要なことなのです。

── 当時は、トレーナーなど人の手によるリカバリーと、科学的療法との端境期だったと思うのですが、新しい治療法を試されてみて、目に見えて違いが分かった点はどのようなところですか。
岩隈 − 肘のリハビリテーションで一番効果的だったのが、炎症をとるためのハイボルテージでした。ハイボルテージを当てると炎症がどんどんとれていくんです。

使い続けていると、使っていることが当たり前になってしまうというか、癖になるというか。すでに日課のようになっていますが、自分の身体をいい状態でキープするために、試合後は治療器を使って早めに炎症をとるようにしています。

治療器で治療中の岩隈久志選手

合わせて超音波を当てると、腕の可動域がよくなります。身体の内部の筋肉を柔らかくして、動かしやすくしてくれますね。ハイボルテージで炎症をとりながら合わせてリカバリーしていくと、回復が早かったです。こうした治療は、人の手だけではできるものではありません。

治療器で治療中の岩隈久志選手

── 身体をゆるめる、鍛える、ケアするというのは、電気や超音波の出力を調整することで違ってくるものですか。
岩隈 − リカバリーひとつとっても、ただ筋肉をゆるめればいいということではありません。すべてゆるめるとだめなことは科学的にも証明されてきています。

すでにスポーツの種類ごとに適した使い方が確立されてきていますし、僕の場合も状況に応じて利用する出力は変えています。超音波を当てるときでも、とにかくゆるめればいいというふうには考えていません。どのくらいのゆるめ具合がそのときの自分に合っているのか、考えながら出力を上げたり下げたりしています。そうすることで効果に違いが出てきます。

── 試合前とか登板前にも、コンディショニングとして治療器を使っているとお聞きしたのですが。
岩隈 − 試合前には超音波を全体的にかけています。超音波を使うと筋肉がほぐれる効果があるのと、動かしやすくなる効果があるからです。練習後は炎症をとるためにハイボルテージを当てて、といった感じです。もちろんその両方を合わせてコンビネーション治療を行ったり、1日に何回か繰り返したりもしています。

身体を意識することにより高まる危機回避力

── セルフ・コンディショニングを意識されはじめてから、変化したことはありますか?
岩隈 − 不思議なもので、肘のケアなどは「この状態のまま続けたらまずいな」ということが分かるようになりました。不安を感じたときには、大事にいたる前にハイボルテージを当てて事前策を打つなど、身体のコントロールができるようになっていきました。疲れているときなど回復を早めたいときや、遠征の移動時にポータブルの機器を当てたりしています。小型の治療器は便利なので、寝ながら使うこともできます。でも、僕の場合、機器を利用してリカバリーするだけではだめなんです。もちろんハイボルテージで炎症を収めたり超音波で筋肉を柔らかくしたりはしますが、加えて身体を鍛えることによって機器から受ける刺激が入りやすくなるので、トレーニングと合わせて使っています。

── 指の骨折や背中を傷められたときにも治療器にはお世話になったわけですね。
岩隈 − はい。年中使わせていただいているもので(笑)。
ケガしたときにはそこを中心に電気を当てたり超音波を使ったりする時間を長くしています。ときには、そのふたつを組み合わせて使うことも。そうやって回復力を高めるわけです。

── 治療器を使った際の回復力と使わなかった場合の違いはどれくらいあるものですか?
岩隈 − 違いを数値で表すのは難しいですが、実感として倍は違う感じです。自然治癒だったら治るまでにかなりの時間を要するような痛みやケガは、治療器を使わないままトレーニングをしてしまうと、完治までにさらに時間がかかってしまいます。それを治療器を使用しながらトレーニングをすることによって、目に見えて早く回復していくという実感があります。

治療器を使用する岩隈久志選手

治療器を使用する岩隈久志選手

── セルフ・コンディショニングで、定期的にやられていることはありますか。
岩隈 − 投げた後にはしっかりとハイボルテージを肩や腰に当てます。筋肉が張ったところは、まず超音波でほぐします。

筋肉の緊張は治療器を使ったその瞬間に取れるものではなく翌日にも残りますが、たとえ翌日に持ち越したとしても、張りというか筋肉の疲労は超音波を使うことで取れやすくなることは確かです。さらに、そこにハイボルテージを入れていくと、同時に炎症をおさえてくれる効果も得られます。手のマッサージだけでは間に合わないくらい身体が緊張しますから。治療器ならではの、人の手の届かない深層部の回復を手助けしてくれるという恩恵があります。

加齢で衰えを感じないのはコンディショニングのおかげ?

── ベテランの域に入られている岩隈投手ですが、年齢からくる変化や対策などは考えているのでしょうか。
岩隈 − いや、あまり考えたことはないですね(笑)。
30歳代前半と比べても、回復力にどのくらいの差があるかは実感としてよく分かりません。身体の感覚に変化が出てきたように感じることはありますが、回復力面ではまだ違いはないように思います。

これも、治療器を使わせてもらいながらやっているおかげでしょうか。身体のフォローアップがきちんとできているのかも知れません。また、投げ終わって中4日の期間中、その時間をトレーニングに当てて鍛えるよりも、どちらかというと回復を最優先で考えながら、年間ローテーションを考えて投げていることも関係しているのでしょう。
というのも、日本で試合をしていたときには中6日あったので、時間の使い方に違いが出ます。2日の差は大きいですね。海外では次の試合までの時間が短いため、どのように身体を回復させていくかを考えるようになるわけです。

年齢的な問題をあえて見つけるなら、身体の張り方が変わってきているのかなぁ。年齢を重ねることでちょっとずつ変わってきているのかもしれません。
その実感としては、投げた日の2日後が一番きつかったりします。次の日より2日目なんですね。だからそのきつい2日目の身体を少しでも軽くするために、投げ終わった後のリカバリーというのを治療器を通して意識的にやっています。

岩隈久志選手

岩隈久志選手

PRSは自分を信じるためのアスリートとしての基礎知識

──「自分を信じるための準備を怠らないことが大事」と以前、おっしゃられています。肉体面ばかりではなく、メンタル面にも強さを感じますが、メンタルの強さを維持する秘訣はありますか。
岩隈 − メンタルを維持するためには、気持ちを切り替えることが大事だと思います。ユニフォームを着ているときと着ていないときの意識を変える、ということです。これまで、そうしたオンとオフの切り替えをはっきりさせながら目標を決めてやってきているので、そのときに何をやるべきかということを考えると、メンタル面は自然と強くなっていくのではないでしょうか。オンのときは野球のことを考えて、オフのときには身体のことを考えるということです。

── メンタルの強さは、やらなければならないことを見据えることでより強くなっていくのでしょうが、それでも年々プレッシャーは増していくと思います。
2015年にはノーヒット・ノーランという偉業を達成しました。2017年に思い描いている目標や夢はどんなことですか。

岩隈 − チームの優勝を目指して戦っていきたいと思います。海外のチームで5年間やってきて、2017年は6年目のシーズンであり、チームの中でもベテランに入るひとりです。チームのローテーションのひとりとして、チームを引っ張っていけるような役割を担って、優勝を目指して頑張っていきたいと思います。

岩隈久志選手

岩隈久志選手

岩隈久志選手

── プロを目指す未来の野球選手に対してひと言アドバイスをいただけますか。
岩隈 − 大きな夢を持つことはとても大事なことです。そして目標が見えたら、自分がいま何をやるべきかを考え、一つひとつ課題を見つけてクリアしていくと上手になっていくと思います。それと、諦めないで挑戦し続けること。挑戦し続ければ、思い描いていた夢が開けてくると思います。

がむしゃらに練習を積むだけではだめです。しっかりと自分の身体と向き合いながら、考えてトレーニングすること。身体の強化であったり、リカバリーを考えることで、合理的な身体の使い方もできるようになっていきます。

── 子どもは回復力も早く、身体のリカバリーまで思いがめぐらないように思うのですが、そのあたりについて、さらに突っ込んだアドバイスをいただければ。
岩隈 − スポーツでケガをした場合、そこには必ず原因があります。その原因を突き止めなければならないのは、大人も子どもも同じです。子どもは回復力が早いからそのまま放っておいても治る、という考えが根強く残っていますが、ややもすると故障が癖になってしまいます。手当ての仕方が悪くて癖になってしまったら、また同じアクシデントに見舞われてしまいます。

ケガが繰り返されていくと、今度は「また痛くなるんじゃないかな」という不安に駆られて、身体を大きく使えなくなってしまいます。縮こまってしまっては、せっかくの成長期に絶好のチャンスを失ってしまうことになります。

現代は治療器も充実しているので、正しい使い方を知り、早く回復させることを身につけていくこと。そうすればより自分の身体を知り、身体の使い方を少しずつ工夫していくことができ、技術もアップし、それが成長につながるわけです。

ケガや故障でくじけても諦めないでほしい

岩隈久志選手

── ご自身がケガを克服し、なおかつ前に進んできたわけですが、子どもたちがケガをすることで、野球に限らずスポーツを諦めることがないように、乗り越えていく強さを教えたいということをおっしゃっていましたが。
岩隈 − 縮こまってしまったら、成長も止まります。すると、スポーツを続けていきたいのにそれができなくなる。
スポーツをするには、身体の使い方を分からないでやるより、理解してやったほうが、雲泥の差でいいに決まっています。たとえケガをしても身体の使い方をいろいろ試して理解を深め、工夫していけば、どこかに新しい道が見えてきます。すると諦めなくて済むんです。今の時代の治療を経験することで、早く回復することも実感できるし、自分の身体の動きや具合への理解を深めることもできます。

── 傷めてしまったら、工夫とリカバリーですね。今後、IWAアカデミーのような施設は、時代の流れからすれば全国に広がっていきそうですね。
岩隈 − そうですね。リカバリーを含めた身体全体に取り組んだ施設の先駆けとしてお役に立ちたいと考えています。 この施設で正しい身体の使い方とリカバリー方法を学び、自分の身体を把握しながら取り組んでもらえれば、技術が向上していくと思います。そればかりではなく、ケガの予防にもつながります。自分の身体を理解するというのは、そういうことでもあるのです。

── 野球に限らず、世の中全体的にスポーツへの取り組み方が変化してきています。かつては「根性」といった精神論が当たり前でしたが、どのようにお考えですか。
岩隈 − 今は科学的に分析され、筋肉の働きが研究され、ケアも大事だということが分かってきました。

それでも、根性は大事ですよ(笑)。根性がないとやっぱり身体はもたないし、メンタルな部分でもめげてしまうと思うので。ただ根性の質が変わってきていることは確かです。ただ「やれ、やれ」という号令のもとやらされてしまうとだめですし、「声を出していけ」と自らを鼓舞させるやり方でも意味はないと思います。身体をどう使ってどのようにケアしながら成長していくのか、ということをまず頭で考えないといけない時代です。

たとえばIWAアカデミーでは、歩き方や走り方の指導もしています。野球に限らず、運動のこと全般が指導の守備範囲です。対象は子どもから大人まで。もちろん一律にプログラムを押しつけるのではなく、その人の身体に合った形のトレーニングや治療方法などを考え、実践を通して身体の使い方を覚えてもらえるよう指導しています。自分の身体の状態や具合を知らないで、がむしゃらに身体を動かす人がいますが、身体を鍛えるとはそれだけではないことを是非知っていただきたいと思います。

岩隈久志選手
岩隈久志選手

岩隈久志 (いわくま・ひさし)
1981年4月12日生まれ。東京都出身。
小学1年生から野球を始める。堀越高校に進学し、1999年のドラフト会議で大阪近鉄バファローズから5位指名を受けて入団。 2004年、最多勝と最優秀投手のタイトルを獲得。 2005年より楽天イーグルスへ移籍。2008年には、沢村賞や最多勝、最優秀選手など投手関連の主要なタイトルを独占。 2009年の第2回WBCでは優秀選手賞を受賞、日本の優勝に大きく貢献した。 2012年より活躍の場を海外に移す。2015年にノーヒット・ノーランを達成。2016年、自らが培った技術やトレーニングメソッド、ケア、メンテナンスをあらゆるスポーツに応用し、子供からアスリートまで幅広い方々を指導する会員制複合型スポーツ空間の共同オーナーとして「IWA ACADEMY」を開校。

「IWA ACADEMY」について詳しくは、こちら>>>

 
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